日本女子プロ将棋協会

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REPORT 2007.08.03

第2回1dayトーナメント「ライブログカップ」優勝自戦記


1dayトーナメントはフリーエントリー制で出場希望をした8人の女流棋士によって行われます。日頃、対局する機会の少ない女流棋士にとっては本当に願ってもない対局の機会であり、第1回の募集ではあっという間に枠が埋まってしまいました…という訳で、第2回の今回は1回目の1dayに出なかった人が優先出場となりました。

第2回1dayトーナメントは「ライブログカップ」、協賛してくださるのは「株式会社ライブログ」様。
そう、第2回1dayトーナメントはネット棋戦だったのです!!!

正直言って、私は全くのネット初心者です。ネット将棋も殆んど指したことがありません。こんな私がこの棋戦に出ても良いのかしら?大丈夫なのでしょうか?
将棋の内容や勝敗はともかく置いといて(?)…まずは対局席にちゃんと着けるかどうかが心配でした。
前日は北尾さんのHNを借りて、夜中までTAISENで練習将棋。点数をずいぶん下げちゃった。まどかちゃん、ゴメンなさい(>_<) 当日はずい分早くからパソコンの前でスタンバイして対局開始を待ちました。 ドキドキ…そわそわ…でも、久しぶりの対局に、ワクワク…というのが正直な気持ちでした。

一回戦の相手は大庭美樹初段。
美樹ちゃんはLPSAの経理担当で殆んど毎日、事務所へ出勤しています。私の担当も総務なので、話をする機会が多いです。
とても真面目で責任感の強い彼女には経理はぴったりの部署だと思います。
LPSAの金庫番、これからもヨロシクです!
さて、大庭初段とはなんと7年ぶりの対局になりました。対抗形になるのかなーと思っていましたが、相振り飛車に…両者激しく攻め合ったあとの第一図。ここで▲76歩と飛車の両取りを掛けられたら、どうなっていたでしょう?かなりパニクッてしまったのではないかしら?秒読みに追われた大庭初段がこの手を逃し、幸いしたように思います。
ともあれ、大きな事故もなく(指し手の間違いはたくさんありましたが…)一局を終えることができてホッとしました。


準決勝の相手は島井咲緒里初段。

彼女は毎コミ本社で、なんとクマのぬいぐるみを抱いての対局です(^^) 普通の対局では考えられないことですよね~まぁ、お客様もお喜びでしたし、なんせ可愛いいから…まぁ、いいでしょ!
島井さんはLPSAでは神田真由美初段と一緒にファンクラブを担当しています。
頼り甲斐があって自然体の神田さんと素直で前向きな性格の島井さんの二人は息もぴったり!8月から受付開始のニューMinervaにどうぞご期待ください(^o^)
さて、この対局も相振り飛車になりました。
第2図は後手が△46歩と歩を合わせてきたところです。ここではお互いに飛角銀桂が全て攻めに参加している形で、相振り飛車でそれぞれがこれだけ好きな形に組み合ったのもかなり珍しいかもしれません。さぁ、どちらの攻めが早いのでしょう?
第2図から▲84歩△同歩▲74歩といきました。これを△同歩なら▲同銀△73歩に▲83歩と玉頭に歩が打てて、潰れ形なので、▲74歩には手抜きで△47歩成~△46歩と拠点を作り△36歩と玉頭狙いにきました。ここで決められないと先手玉もかなり危ないのですが…。▲73歩成△同桂▲同桂成のときにどの駒でも取りづらく、△同金と取りましたが、▲74歩~▲95桂が厳しく、以下、終盤道化師(!)の私でも上手く寄せきることができました。


長年、相振り飛車を指していますが、これだけ気持ち良く攻められて、しかもきちんと寄せられたのは久しぶりです(^^ゞ 時間の長い将棋ですと、余計なことを考えすぎてしまって、後になって「どうしてあのとき第一感を大事にしなかったのかしら?」ということがあります。今回は持ち時間が短い上にネット慣れしてない私は必要以上に心配なことがたくさんあって、必要以上に早く指してしまったことが手が伸びた要因かなぁ、と少し思いました。観戦してくださっている方のことを考えれば、もう少し時間を使って指さなければいけなかったのかな、と今となっては反省していますが、このときはネット初心者の私にそんな余裕はありませんでした(*_*)

感想戦の途中で急遽呼び出され、決勝戦はLPSAのKOMAGOMEサロンで行うことになりました。
この日は台風の真っ只中であり、朝から自宅に篭っていたため、慌てて仕度をしてKOMAGOMEサロンに駆けつけたのでありました。。。
電車の中から携帯メールで決勝の相手を聞く。えっ?鹿野さん?なんか、いや~な予感(゚゚)
もしかして、またまた相振り???


KOMAGOMEサロンに到着すると中継スタッフの皆さんが拍手で迎えてくれました~ずい分大勢の方が働いてらしたんですねぇ…知りませんでした。お疲れさまですm(__)m
ここで、ハタと気付く…私って、対戦相手が目の前にいないのを良いことに、かなりひとり言を呟きながら指していたような気がする…今度は気をつけなくっちゃ!
私が使わせていただくことになったのは藤田麻衣子1級のパソコンでしたが、マウスが私がいつも使っているのと違うタイプのものだったので取り替えてもらいました。
わがまま言ってスミマセン~^_^;

さて、いよいよ決勝戦、相手は鹿野圭生初段。
鹿野さんとは何を隠そう同い年です。最初に指したのは成人式を迎える年のお正月、松山の将棋まつり、鹿野さんは振袖姿の女子大生でした(^^)
関西人気質でサービス精神たっぷりのお姉さま(私に言われたくない?)同い年だけど先輩の私をいつも立ててくれます。でも、新女流棋士番号ではかなり近くなったよねー(^_^)
先日の大阪商業大学の公開対局では、やはり相振り飛車になり、なんと199手も指してしまい、今まで持将棋経験のなかった私はすっかりトラウマになってしまいました。
「入玉」と「ひとり言」には気をつけよう!と心に誓い、いざ対局開始!
さて、戦形は…またまた相振り飛車になりました。しかも大商大の公開対局と全く同じ、矢倉vs金無双…今度は入玉だけはさせないぞ~って、どんだけ懲りてるんでしょうねー(゚o゚)
第3図は後手が飛車先の歩を交換して△25飛と中段に飛車を引き、仕方なく▲77桂と85の歩を受けた局面です。ここでは△75歩と先手の桂頭を狙う手があり、その手を指されているとかなり忙しいことになっていました。勢い▲65歩から攻めるしかなさそうですが、攻めの準備も整っていないので、ちょっと切れ気味かもしれません。
▲97角と角も攻めに参加して▲65歩から開戦!後手の角がまだ使えてないので今がチャンスと思いました。▲65同飛から飛車交換を望みましたが、正直、後手は玉が71なので飛車交換は避けられるのかなぁと思っていました。


第4図は飛車交換のあと△64銀と交わした手に対し、▲73歩△同桂と歩を取った局面、どうやらここでは▲52銀と打てば決まっていたようです。次の狙いは▲61飛~▲63銀成。それを防いで△62金引きなら▲64角△65桂には▲31飛~▲73歩と攻めが続き、先手玉はまだ手付かずなので、勝勢だったようです。しかし▲73同桂成△同銀▲31飛と平凡に指してしまい、せっかくのチャンスを逃してしまいました。再度の▲65桂に対し、△69飛と飛車をおろされ、忙しくなってきました。


第5図は△35銀と竜、そして2筋に狙いをつけて銀を打たれた局面です。数手前に打たれた△22香が厳しい手で、かなりパニくっています(゚o゚) 勢い▲73桂成△同金▲63金と攻めましたが、ここで△26銀と飛車を取られていると、その手が△27銀成からの詰めろになっていて一手負けだったようです。△72金打ちと一手戻したために▲66竜△25香に▲79歩、と竜の横利きを遮断できて、また一方、先手は竜が攻めに参加できるようになったので、切れない形になりました。途中、どこかで△45歩と角を使われる手も気になっていましたが、ここでは少し残しているようです。


思いがけなく女流棋士になって初めての優勝を経験させてもらいました。
こんなことを言ったら不謹慎かもしれませんが、対局中は真剣勝負をしているという切羽詰った緊張感はなく、ゲームを楽しんでいるようなわくわく感で一杯でした。
対局に勝ってすぐに大喜びするということは普通の対局では考えられないことなのですが、このときは思わずニッコリしてしまいました。

また、対局中はシーンとしていたのに(当たり前!)終局とともにキコーンキコーンキコーン…って、あまりにもたくさんの祝福と労いの言葉が届いて、びっくりして、感激して、思わず拍手までしてしまいました。
ずい分大勢の方が観戦してくださっていたようで…観戦してくださった皆さま、本当にありがとうございました。
対局中はすっかり自分の世界に入ってしまい、勢い早指しで進めてしまい、ご迷惑をおかけしましたこと、お詫びいたします。
また、最後になりましたが、ご協賛いただきました株式会社ライブログ様に厚く御礼申し上げます。

ここ一年半は私の人生において激動の年でした。
今まで、女流棋士と主婦をぬくぬくと続けてきた私ですが、自分のあまりの無力さを思い知らされながらも自分なりに(!)一生懸命がんばってきたつもりです。
なので、今回の優勝は将棋の神様がご褒美をくださったのかなぁ、と思っています。

女流棋士になって28年、鳴かず飛ばずで低空飛行していた女流棋士がトーナメントで優勝できたのですから、これは凄い快挙だ!と自分でも驚いていたのですが、なんとその数日後に石橋さんが本物の快挙を成し遂げました。こちらはまだこれからトーナメントが続いていくのですから、もっともっと快挙を続けていってもらいたいと応援しています。
二度あることは三度ある。さぁ、次は誰の番かな?
LPSAの女流棋士、ファイトっ!!!
(藤森奈津子)