日本女子プロ将棋協会

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REPORT 2007.07.03

中井六段自戦記

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 1dayトーナメントは、女流棋士の松尾さん、北尾さんが新法人設立前から発案していた企画です。月1回の開催ですが、毎月いろいろな趣向を凝らしてやってみたいと、張り切っています。
 第1回目は、オールオフィス様、パールファクトリー様にご協賛いただきました。LPSAが発足して初めての棋戦ということで、普段笑いが絶えないメンバーも、朝から真剣な面もちです。
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 1回戦は、山下五段との対戦。山下さんとの対局は久しぶりです。第一期生の大先輩で、今回のLPSA設立には感慨深いものがあったことと思います。
居飛車対四間飛車で、得意としている左美濃戦法に。序盤は不満のない組み上がりとなったのですが、中盤でミスがあり不利に。その後も山下四段のベテランらしい指し回しに、どんどん形勢が開いてしまいました。
 1図で山下さんは△3七桂成と指したのですが、予定通り△3八角成とする方が良かったようです。急に▲4五桂と使われるのが気になって予定変更したそうですが、角が質駒になってしまったのがもったいなかったようです。最後は相手の秒読みに救われ、冷や汗をかきながらの辛勝でした。

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nakai-ishibashi_066.gif 2回戦は石橋四段戦。石橋さんとは普段から仲が良く、いつも馬鹿話をしながら大笑いを繰り返しているという感じです。責任感も強く、今回のことでも人一倍動いています。
 石橋さんは居飛車・振り飛車を両方指しこなすので、なかなか戦形の予測がつきません。本局は、ご機嫌中飛車に。一進一退の中盤戦でしたが、端から手を作れて優勢に。途中、簡単な勝ちを逃したものの、(2図で▲8四銀と出れば△同玉に▲9五角の王手飛車があり、決まっていた)優勢をキープして終盤へ。

nakai-ishibashi_117.gif 秒読みに入り、リードを意識しながらも読み切れないまま最後の寄せ合いに。感覚で金を取れば詰めろになっているだろう・・と指した▲5四角成(3図)が、実は詰めろになっていなかったようで、△6八歩成り▲同飛に△5七歩成とされていたら負けていました。
 石橋さんも読み切れなかったのか、私の気合いに押されて(笑)△6八歩成▲同飛に△5三金と受けてしまったため、▲6四桂から勝ちになりました。
 2回戦も危なく逆転負けしそうでしたが、なんとか決勝戦へ。

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 決勝は、島井初段戦です。彼女は高知出身。美人で明るく、人気の高い棋士の一人です。得意戦法は振り飛車穴熊。相振り以外は、ほとんど穴熊に囲って攻めてきます。
 振り駒の結果、私が後手に。戦型はやはり振り飛車穴熊でした。対して、こちらの作戦をどうするかです。持ち時間も短いので、相穴熊にしようか・・とも思ったのですが、いかにも暑くるしいので銀冠に。
 4図から、先手は▲3八飛とまわってきました。▲3九金と寄る手も普通ですが、先手ということもあり、より積極的な手を選んだのでしょう。
 ここから数手進んで▲3五歩△同歩▲同飛と3筋の歩を交換してきたのが5図。
shimai-nakai_041.gif ここで作戦が分かれます。ポイントは角の使い方で、3三の位置のまま戦うか、移動するか。
 本譜はここから△5一角と引いて、角を転換する方を選びました。
 5図から、△5一角▲3八飛△7三角▲6五歩△3三桂▲6六銀△3四歩▲5六歩△8四角▲5五歩△同歩▲同銀△5四歩▲6六銀と進み、6図へ。

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shimai-nakai_055.gif 6図から、△6四歩▲同歩△同銀▲6五歩△5三銀と後手も一歩交換し、銀を引きました。これは性格に反し?ちょっと大人しい指し方だったかもしれません。▲6四歩△同歩に▲6二飛の方が勢いがありました。
 
 △5三銀に対し、▲5七銀は筋の良い振り飛車らしい手。△7三桂に▲5六銀と立って、▲4五歩からの攻めをねらいます。
 △6二飛▲6八飛と進んで7図。

shimai-nakai_065.gif このときに振り飛車側を持って気になるのが3九の金が角でねらわれていること。いつでも角を切ってこられて囲いが薄くなるのが嫌味です。その弱点を突いて△2五歩。放置すれば、△2六歩▲同歩に△2七歩があります。島井さんは▲3八金と上がって受けました。これも、振り飛車党らしい感覚です。▲3七金と寄る手もありますが、いつでも切ってこられる金をかわすことによって、あたりを避けているのです。
 ここで、△5五歩と仕掛けました。

shimai-nakai_068.gif ちょっと無理筋のような気もしたのですが、他に有効に待つ手も思いつかなかったので、元気良くいってみました。後手としては、3八の金が浮き駒になっているところが狙い目です。
 △5五歩▲同角△5四銀に、▲6四歩と突かれたのにはびっくりしました。さすが、若手棋士の指し手には勢いがありますね。でも、この場合はじっと角を引いておいた方が無難で、▲6四歩は元気が良すぎたようです。

shimai-nakai_075.gif 数手進んで9図。ここで△4九角が痛打。3八の浮き駒の金をねらって、後手優勢となりました。穴熊は金・銀がくっついていると堅い囲いなのですが、一枚一枚剥がされていくと、急に薄く弱い囲いになってしまいます。

shimai-nakai_095.gif 10図で、△7六角成とソッポにいく手が好手になります。成り銀を取られてはいけませんので▲4二金と打ちますが、そこで△3九金とベタっと張り付く手が詰めろになります。
 △同銀▲同角成りに△2八金と打つしか受けがありませんが、△6八歩と飛車の横利きを消す手があります。

shimai-nakai_102.gif 局後、「この△6八歩は代表理事としてあるまじき行動なので、次の理事会の議題にかけます」と石橋さんに通告されてしまいました。盤上この一手だと思うのですが・・。
 最後は即詰があり、何とか優勝することができました。

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 副賞には黒真珠のネックレスをいただけるそうで、ヤッターと声をあげたくなるほどの喜びが!!何を隠そう(別に隠してませんが)私は6月生まれなので、誕生石なのです。正直言っていろいろと疲れが溜まっていましたが、将棋で勝つ喜びは一番の癒しになります。第1回の1DAYトーナメントに優勝できて、本当に嬉しいの一言です。
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 石橋さんから理事会で議題にあげられることもなく、無事?1dayトーナメントが終了でき、ホッとしております。今後も、第2回、3回と魅力ある棋戦にしていきたいと思いますので、どうかご声援を宜しくお願い致します。
 最後になりましたが、ご協賛いただきましたオールオフィス様、パールファクトリー様に厚く御礼申し上げます。   
(中井広恵)