日本女子プロ将棋協会

R E P O R T

REPORT 2024.01.22

女流棋士をめざす人へメッセージ(田中沙紀)

田中沙紀1級プロフィール

まず将棋に、そして女流棋士という職業について興味をもってくださってありがとうございます。
とても嬉しいです。将棋は本当に楽しく素晴らしいものだと思っています。
ありがたいことに子どもの頃からの夢だった女流棋士として現在活動させていただいています。

自分は女流棋士を本格的に目指したのが遅かったですし、地方からプロを目指すことの苦労などさまざまな困難がありました。
将棋を趣味として楽しんでやるなら、好きな時に将棋をすれば良いですし、いつ辞めても自由ですが、プロ棋士(女流棋士)を目指すとなると事情は変わります。
プロを目指す人たちは、他の人たちが遊んだり、違うことをしている時も常に将棋を優先している人たちです。
他のひとよりも何倍も将棋をしている人たちばかりです。
好きなことを職業にするということはそういうことです。
常に向上心や継続する力が求められます。
仕事にする以上、現役を辞めるまでは将棋とは毎日一生の付き合いになります。
どんな状況でも、全身全霊で自分のすべての力をもって対局に臨むことが求められます。

女流棋士をめざすこと、そして女流棋士になってからの大変さは、自分の想像よりもはるかに大変でした。
女流棋士を目指しているときは将棋を第一優先にして、自分の人生をかけて必死に挑戦していました。
辛かったこと、やめたいと思ったことは数え切れません。
しかし覚悟を決めて悔いのないように、挑戦せずにあきらめるよりも挑戦したいと思ったので今があります。
元気に好きな将棋ができる時間というのは自分が思っていたよりもはるかに短く、時間はあっという間に過ぎていきます。
過ぎた時間は当たり前ですが戻ってきません。
悔いのないように毎日頑張るしかないのです。

そしてプロになるのも大変ですが、プロになってからがスタート地点です。
プロの先輩方は全員が強く、皆が頑張っている厳しい勝負の世界で勝ち上がることはさらに大変です。
勝負の世界で生き残っていくには、今ある環境に感謝して自分のやるべきこと、やらなければいけないことをしっかりとやるしかないのです。
朝起きてから寝るまでの間にどれだけ将棋に費やすことができるか、将棋と向き合えるのか、日ごろの鍛錬ですべてが決まるのです。

しかし辛いことばかりではありません。
将棋のおかげで、他の人がどんなに大金を払っても決してできないような貴重な経験をたくさん得ることができました。
自分のことを応援してくださる人がいることのありがたさ、日々の充実感、将棋仲間たちと好きな将棋をたくさん指すことができる幸せ、試合での緊張感、勝ったときの何ものにも代えがたい喜び、尊敬する先生方とお会いすることができることなど女流棋士になって良かったと感じたことも多くあります。
将棋には感謝の気持ちでいっぱいです。今では将棋がない人生なんて考えられません。生まれ変わっても将棋をやりたいと思っています。
自分にとって将棋とは生き甲斐であり、生きる希望であり、自分の全てです。

今後、新たにGSPチャレンジに参加する方は「女流棋士資格を得た際にLPSA所属を希望している人、LPSA所属を検討している人」に限らせていただくことになりました。指導側として、同じ志でLPSAの活動理念に共感してくれる人、LPSAに合う人に指導したいという気持ちがあります。

参考になれば幸いです。