観戦記(3) 瞬きとため息 辰巳五郎
▲7七桂を指した後、林葉さんは席を立った。立つと同時に蝉が鳴きはじめた。ここまでの消費時間は、林葉さん13分、中倉女流初段20分。
中倉女流初段は長考に入った。視線は敵陣右翼に注がれている。対局開始以来、中倉女流初段の瞬(まばた)きの回数が多い。女性の場合、1分間に32回以上瞬きをしている時はかなり緊張をしている状態という。取材陣の多さと熱気から、見慣れたLPSAサロンが異空間化し、取材陣が去ったと思ったら、そのまま「林葉直子」との対局。プロといえども、緊張しないほうがおかしい。
林葉さんが席に戻ってきた。蝉の鳴き声が止んだ。林葉さんは向いの壁に貼られている「集まれ将棋ガールズ」のポスターを眺めている。
中倉女流初段、林葉さん、ともに対局中は相手の顔は見ない。林葉さんが扇子をパチパチと二度鳴らす。林葉さんの扇子は大山康晴十五世名人の「夢」。
今日の林葉さんは、レインボーカラーのチューブトップワンピースにラベンダー色のカーディガン。本人曰くリゾートファッション。中倉女流初段は、濃紺のカットソーに白のスカートと、シックな装い。
テーブルには、二人にそれぞれ2本の飲み物が用意されている。
ひとつが、日レスインビテーションカップの協賛である株式会社トーエルの「アルピナ・ピュアウォーター」(http://www.alpina-water.co.jp/)。北アルプスの麓で採水される水を逆浸透膜システムにより分子レベルまで磨き上げた、純水に近い水だ。
もうひとつが、やはり協賛であるキリンビール株式会社と同じキリングループのキリンビバレッジ株式会社の「午後の紅茶 ストレートティー」(http://www.beverage.co.jp/gogo/)。紅茶は「冷やせば濁る」という性質を持っているが、この特性をクリアアイスティー製法により打破したリーフティーの本格紅茶だ。
読みのエアーポケット
中倉は12分の長考で△8五歩。林葉さんの誘いの隙には乗らなかったものの、この手は危険だった。▲8五同桂と取られる筋がある。(△同飛なら▲9六角)
(第4図)
▲8五同桂△5四角▲8六飛、または▲8五同桂△8四飛▲8六歩のような展開となり、一気に優勢になるわけではないが、一歩得であることと指し手の主導権を握れることが大きい。
▲8五同桂の筋は、対局中は両対局者とも気が付いていなかった。読みから抜け落ちていた。感想戦で林葉さんは「なんだ、取っていれば良かったんだ。気が付かなかったから、気が付かなかったのよね」と笑いながら語った。対局者同士のテレパシーのようなものだ。
幸せそうな表情
大きくため息をついた林葉さんは▲6五歩から攻めにいった。△同歩なら▲同桂△6四銀▲6六歩で、次に▲7四歩や▲6三角の楽しみが残る。
中倉は△8四飛と柔らかく受ける。ここで林葉さんが考え始める。扇子を鳴らしてため息を二回。林葉さんは、指し手が思い通りにいっている時に、ため息が出るようだ。
そして、4分考えて▲7四歩。決戦開始。
林葉さんが席を立った。先程と同じように、立つと同時に蝉が鳴きはじめた。中倉は読みにふける。瞬きの多さは変わらない。
林葉さんが席に戻ってきた。不思議なことに、先程と同じように蝉の鳴き声が止んだ。林葉さんは「アルピナ・ピュアウォーター」を飲む。
中倉は40分の持ち時間を使いきって、秒読みになった。林葉さんは残り19分。
林葉さんの対局中の表情は少し微笑んだ感じのポーカーフェースだが、間近で見ていると、楽しみながら将棋を指している雰囲気が強く伝わってくる。
「将棋に戻ってきて良かったですね」
思わずそう声をかけたくなってしまうほどだった。
決戦
▲7四歩に対して中倉は意を決したように△同飛として、飛車交換を迫る。△同歩では▲6二角と打たれ馬を作られるので△同飛しかない局面でもある。以下、飛車交換をして互いに飛車を打ち合った。
(第5図)
林葉さんは、ここから▲8一飛成と桂を取る。▲4一飛成△同銀▲7九金もあったが、林葉さんは桂、香を入手して敵陣に迫る絵図を描いた。以下、△8八飛成▲5五桂。
局後に林葉さんは▲5五桂を悔やんでいた。▲5五桂では、先に▲9一竜と香を持ち駒にして、それから▲5五桂を狙う方針のほうが本譜よりも優っていた。△4二金引と引かせてからの▲9一竜は、次の▲4三香を見せたスピード重視の手だが、中倉は取ったばかりの銀を5四に打ち込み必死の防戦。
(第6図)
しばらくしてから、林葉さんが「そうか……」とつぶやいた。
林葉さんは、銀を受けられてやや悲観してしまったと局後に語っていた。だが、ここではまだまだ有望だった。
(つづく)
投稿者: lpsa
中倉彰子初段-林葉直子さん観戦記(2)
観戦記(2) 林葉式石田流 辰巳五郎
午後1時、対局が開始された。立会人は石橋幸緒女流四段、記録は大庭美樹女流初段。
林葉直子さんがノータイムで▲7六歩。
間もなく中倉彰子女流初段が△3四歩。
ここで、取材陣が退出。時計が止められ、対局がいったん中断する。
林葉さんは席を立って一服。
中倉は席に座ったままで「初めての雰囲気で……」とつぶやく。
中倉は自身のブログでこの時の様子を次のように書いている。
対局場の入ると、報道陣の多さにビックリ。
見慣れたLPSAサロンが、異空間のように感じました(^^;)
テレビでの司会の経験が豊富な中倉でさえ驚くほどの、熱気と人の多さだった。
二人の棋風
林葉さんが日本将棋連盟を退会する1年5ヵ月前に中倉が女流棋士になっているが、この間、二人の対戦は一度もなかったので、初手合いということになる。
中倉は四間飛車穴熊を得意としているが、もともとは居飛車党。相手が振り飛車のときは相振り飛車にせず、居飛車穴熊にすることが多い。序盤から少しずつリードを広げて勝ちにいくタイプで、優しく清楚な外見とはうらはらに、過激な指し手が繰り出されることも多い。
一方の林葉さんは、変幻自在。過去の棋譜をもとにそこから新しい一手を研究するのではなく、最初から自分自身で違う棋譜を創造してそこから最高の一手を考えたいという主義だ。
現在では戦法として確立されている初手▲3六歩からの袖飛車は、林葉さんが20年前に多用していた戦い方であり、対左美濃藤井システムも、20年前の林葉さんの一局(1990年12月13日女流名人位戦 中井-林葉戦)がヒントになったとされている。
現役時代から定跡や他人の棋譜は研究しなかった。あるインタビューでは、林葉さんが一番やりたくない棋士は林葉直子と語っている。何を考えているのかさっぱりわからないというのがその理由。
林葉さんの将棋は、ひらめきを積み重ねる将棋なのだ。
▲7五歩の背景
午後1時6分から対局再開。
再開直後、林葉さんがノータイムで▲7五歩と突いた。
石田流の出だし。
この日、林葉さんは事前に具体的な作戦を立ててきたわけではなかったが、相振り飛車を想定していた。(後手番だったら4手目に△3三角と指すつもりだったと局後に語っている)
まだ対戦相手が決まる前、林葉さんはある棋士からアドバイスを受けた。
「最近の女流の対局は相振り飛車になることが多いんですよ」。
林葉さんは、対局までの時間が限られているので、相振り飛車に絞って研究を開始することにした。その時には相振り飛車の指導も受けた。15年ぶりの対局とはいえ、定跡や棋譜を研究しない林葉さんとしては異例のことだった。
この5月、林葉さんが将棋連盟に15年ぶりに行った時(昨日の記事参照)に、「あっ、大ちゃんの本だ」と言って販売部で買った本が、鈴木大介八段の「明快相振り飛車」(創元社)。戦型の分類と整理にちょうど良い本だった。
▲7五歩は、そういう意味では、石田流対居飛車ではなく相振り飛車の気持ちで指された▲7五歩だった。
しかし、中倉は相手が振り飛車のときは相振り飛車にはしないので△4二玉。
局後の記者会見で、
石橋「3手目▲7五歩は現在将棋界でも流行している作戦でして・・・」
林葉「えー、全然知らなかった(笑)」
というのも、このへんに理由がある。
林葉さんはノータイムで▲7八飛。
相振り飛車にならなかったとしても、一向に気にせず前に進むのが林葉流。
乱戦を避ける
中倉としては▲7八飛ではなく▲6六歩を予想していたのだろう。これなら持久戦になり、中倉が得意とする自玉を固めてから攻撃体制に移る図式を実現できるし、そのような実戦例も多い。
しかし、大胆な▲7八飛。
この局面から、△8八角成▲同銀△4五角という手がある。以下、▲6八金△2七角成▲7四歩△同歩▲5五角△3三桂▲7四飛△7三歩▲3四飛などの展開の乱戦になるが、それは序盤における中倉の棋風ではなく、また、現役時代、形にこだわらない将棋を得意としていた林葉さんを乱戦に誘導するのは得策ではないという判断がはたらいた。
そういうわけで中倉は、少考後おだやかに△6二銀。以下、駒組みが進むが、林葉さんの▲5八金左から▲7六飛が独特な指し方。このタイミングの▲7六飛は△3四歩を狙いにいく含みがあるので、中倉の角交換から△3二銀は必然の流れとなる。
誘いの隙
林葉さんの▲5八金左が独特な理由は、▲7六飛と浮いて角交換されると、その後の模様の取り方が難しくなるからだ。7八の地点にスキができるので、▲7七銀や▲7七桂と活用しづらくなる。
通常は▲5八金左と上がらずに、将来▲7八金とする前提で6九金のままでいるのが石田流の指し方。
升田幸三実力制第4代名人は自らが編み出した升田式石田流を数多く指しており、そのほとんどは▲7八金(△3二金)と活用しているが、一局だけ実験的に▲5八金左(△5二金左)と指したことがある。(1971年12月王将戦 対有吉道夫八段戦)
後手の升田九段は、2一桂の活用もままならず、2二の銀を僻地の1三に上がる非常手段をとっている。この後、升田陣は攻め潰される。
升田式石田流の家元、升田幸三実力制第4代名人をもってしても、▲5八金左(△5二金左)型は、うまくいかない。
しかし、林葉さんは、この難題をクリアしてしまう。
指し手が進んで第3図。
▲7七桂と跳んだので、7八と8九に角を打ち込むスキができた。一瞬ドキッとするような局面だ。
しかし林葉さんは対策を用意していた。△7八角には▲9八角で、
(1)△6九角成ならば▲8九角。次に▲5九金寄で馬を取ることができる。
(2)△3五歩には▲6五桂(7八角取り)△3四角成▲7三桂成△同桂▲7四歩。
角を手放したくなければ、△7八角と打たれた時点で、▲6五桂△8九角成▲7三桂成△同桂▲7四歩という、もっと過激な手順も成立する。
△7八角や△8九角を打つと幸せになれない。
この局面、感想戦で林葉さんは次のように語っている。
「角を打ってくれないかな~と思っていたのに」。
林葉さんが現役の頃は、升田式石田流がプロの間では指されなくなっていた時期だった。現役時代を含め、升田式石田流の研究をしたことがない林葉さんが、一瞬のひらめきで創り上げた局面だったのだ。
石田流の姿を借りた林葉流の将棋と言うべきか。
(つづく)
8/2~6 日レス杯中倉彰-林葉戦の観戦記掲載開始
LPSA公認棋戦「日レスインビテーションカップ・第4回女流棋士トーナメント」(主催:日本女子プロ将棋協会、日本レストランシステム株式会社/協賛:株式会社トーエル、キリンビール株式会社、中沢乳業株式会社)の2回戦、中倉彰子初段-林葉直子さんの対局は、7月28日(水)13時より東京・北区「LPSA駒込サロン」で行われ、14時46分、74手で後手の中倉彰子初段が勝ちました。
本局の模様は8月2日(月)から6日(金)まで辰巳五郎さんによるweb観戦記として「日レスインビテーションカップ中継サイト」に掲載いたします。どうぞお楽しみに!
★観戦記はこちらからどうぞ
中倉彰子初段は、8月8日に東京・新宿区「京王プラザホテル東京」で行われる準々決勝で、船戸陽子二段と対戦いたします。また、当日林葉直子さんは大盤解説会のゲストとして来場予定です。
【日レスインビテーションカップ準々決勝・準決勝実施要項】
http://joshi-shogi.com/kisen/nrs/4thnic_semifinal.html
【中倉彰子初段コメント】
緊張した対局でした。4手目角交換はおだやかにしたかったので避けました。攻め込まれて悪くなる順もあったので危なかったです。48手目△2五角に対して4八金寄とされていたら攻めが空振りになってしまったかもしれません。終わってほっとしました。
【林葉直子さんコメント】
実戦が全然できなかったので見落としが多かったです。実戦をもっとやらないとだめですね。▲55桂(43手目)がひどかった。銀を受けられて手がなくなってしまいました。椅子対局はやりやすかったです。時間はあっという間でした。
今後については、負けたばかりなので少し時間をください。今度京王プラザ(大盤解説会)にうかがうので、ファンの皆さんの声も聞いて考えたいです。
【立会人・石橋幸緒四段(LPSA代表理事)コメント】
注目の一戦がまずは無事に終わり、皆様に予想以上の反響をいただきましたことに感謝申し上げます。
最後まで見ごたえある将棋で、個人的にも林葉さんの指しまわしには胸高鳴る思いがありました。特に序盤は仕掛けのチャンスがあって「これは!」と、一ファンの気持ちで期待していました。中倉初段の鋭い寄せの前に今回は残念な結果となってしまいましたが、林葉さんにはこれを機会にまた将棋を楽しんでいただき、女流棋界を応援していただければと思っております。
【中井広恵六段(LPSAエグゼクティブアドバイザー)コメント】
終盤はちょっと一方的でしたが、ブランクの割には途中までの指し方はよかったと思います。
とにかく体調を直すことが第一なので、体調がよくなったら今後のことを落ち着いて考えてほしいです。
中倉彰子初段-林葉直子さん観戦記(1)
観戦記(1) 15年ぶりの復活
辰巳五郎
午後12時45分、林葉直子さんが対局場へ登場すると、一斉にフラッシュがたかれた。テレビカメラも林葉さんの姿を追っている。取材陣は30名近くの人数。
LPSAは、この日の記者会見を円滑に進行するために広告会社のサポートを受けており、前々日には予行演習を行うなど入念な準備をしている。
林葉さんの撮影は5分間行われ、12時50分には中倉彰子女流初段が入場。再び一斉にフラッシュがたかれる。
両対局者が席について、駒箱を開けるときに、二人の会話があった。
上位者が駒箱を開けて駒を取り出すのが作法だが、中倉女流初段が林葉さんに「どうぞ」とうながした。林葉さんは笑顔で、「それはプロの先生が」。
中倉女流初段が駒を取り出して、中倉女流初段、林葉さんが交互に駒を並べていく。
林葉直子さんが15年ぶりに戻って来た。
日レスインビテーションカップへの主催者特別招待選手としての参加なので、将棋界への復帰ということには即つながらないが、林葉さんにとっても将棋界にとっても、大きな出来事であることは間違いない。
林葉さんへ、LPSAを通して日レスインビテーションカップ出場のオファーがあったのは4月下旬のことだった。林葉さんはこれに快諾して、対局は7月に設定された。対局相手は中倉彰子女流初段。
思えば、林葉さんにとっては長い15年であり、波乱に富んだ15年だった。
中倉彰子女流初段と林葉直子さん
中倉彰子女流初段は1977年3月2日生まれ。お父さんが大の将棋好きで、“彰子”の名は、時の蛸島彰子女流名人にあやかってつけられた。中倉が将棋を覚えたのは6歳のとき。妹(中倉宏美女流二段)と一緒に将棋の駒にさわって遊んでいるのを見たお父さんが教えてくれた。
この頃、林葉さんは15歳。前年に蛸島から女流王将を、その年には蛸島から女流名人位を奪取し、二冠王となっている。
1970年代が、蛸島彰子、山下カズ子をはじめとする女流棋士1期生が牽引し女流棋界の土壌を作り上げた創成期とすると、1980年代は、10代の林葉直子、中井広恵が大活躍して、その土壌から芽を出す飛躍期だった。
中倉は、1991年と92年の女流アマ名人戦で優勝し、1992年に女流育成会に入会する。そして1994年4月に高校3年で女流棋士(女流2級)としてプロデビューする。
中倉がプロになった時の林葉さんは、タイトル獲得15期、将棋大賞女流棋士賞6回受賞のスター棋士で、日本中で「林葉直子」の名前を知らない人はいないほどだった。
中倉から見たら、「林葉直子」は憧れ、あるいはそれ以上の存在だった。
林葉さんの波乱
ところが、同じ年の6月11日、新聞、スポーツ紙、テレビなどで、林葉さんが失踪したと一斉に報じられる。
林葉さんは5月29日に、心身ともに疲労を感じ極限状態にあるのですべての活動を停止ししばらく休養したい、棋士としての処遇は日本将棋連盟理事会の決定に従うという旨の休養願いを提出していた。理事会は特例としてこれを受理したが、すでにスケジューリングされている対局について林葉さんと話し合う必要があった。しかし、林葉さんとの連絡が取れなかったため中途半端な状態が続いた。このとき林葉さんはロンドンへ行っていた。
6月9日、10日の対局に林葉さんが現われなかったことで、6月11日の失踪報道となる。サイババに会いにインドへ行っているというデマまで流れた。林葉さんにも脇の甘いところはあったが、様々なボタンの掛け違いで、休養願い提出報道であるべきところが失踪報道として独り歩きしてしまった。このような大騒動になるとは思ってもいなかった林葉さんは、7月中旬に急遽帰国し、記者会見を開くことになる。
私は、林葉さんが人の悪口を言うのを一度も聞いたことがないが、「千駄ヶ谷近辺には行きたくない」とだけは数年前まで林葉さんは語っていた。彼女の夢を育んできた地が、思い出したくない場所に変わってしまったのだった。
林葉さんにも連盟理事会にも悪意はなかったものの、結果的には林葉さんにとって極めて不幸な出来事となった。
退会
林葉さんは、1995年8月24日に日本将棋連盟に退会届を出した。将棋が嫌いになったわけではないが、情熱が冷めたという理由だった。
日本将棋連盟で退会記者会見をしたその夜、林葉さんは新宿の料理店で行われていた羽生善治六冠(当時)と畠田理恵さんの婚約お祝いの席へ駆けつけている。林葉さんは羽生六冠の実力と人間性を高く評価しており、お別れの挨拶も兼ねていた。
その後の15年
中倉は、1997年と1999年にNHK将棋講座の聞き手、2000年度から2002年度までNHK杯将棋トーナメントの司会・聞き手を務めるなど、その清楚で明るい笑顔は多くのファンを魅了した。しっかりとした外見からは想像もつかない天然キャラクターであることも人気の一因となった。
中倉彰子・宏美姉妹がヒントとなって2001年に制作された女流棋士姉妹が主人公の映画「とらばいゆ」(主演 瀬戸朝香)では、瀬戸朝香への将棋演技指導、記録係役での出演など、姉妹で活躍している。2002年には、ソロシングルCD「Tearful Smile」をリリース。インターネットラジオ「Positive de GO!」(2007年5月~2008年6月、2010年)では中倉姉妹のトークが好評を博した。
昨年の日レスインビテーションカップでは、ベスト4に勝ち残っている。
私生活面では、2003年の8月に中座真五段(現七段)と結婚。今年の6月11日には男の子が産まれ、中倉は三児の母となった。
一方、林葉さんは、退会後は波乱万丈の15年間を迎えることになる。
1998年、週刊文春で林葉さんの不倫スキャンダルが持ち上がる。2007年のゲーム誌のインタビューで林葉さんは、ニューヨークに遊びに行く直前に電話をかけたのがたまたま雑誌の編集をやっていた友人だったことがきっかけとなって、不倫問題が発覚してしまったと語っている。また数年前の週刊文春の取材回顧特集では、テレビを見て事の推移に驚いた林葉さんが「あれでは(先方が)可哀想すぎる、これからすぐに謝りに行く。もうこれ以上記事は載せないでほしい」と号泣したこと、編集部が説得しそれを止めたことなどが編集部によって書かれている。
その後、写真集を出したりしていた林葉さんだったが、転機は2004年に訪れる。
ひとつは、月刊漫画雑誌で将棋をテーマとした「しおんの王」の連載が始まったこと。原作は“かとりまさる”、これは林葉さんのペンネームだった。小説のつもりで原稿を編集者に見せたら、面白いので漫画の原作にしようということになったのだ。かとりまさる=林葉直子であることは1年以上極秘とされていたが、退会してから9年間、将棋とはまったく関わりを持たなかった彼女が将棋と少しでも向き合った瞬間だ。
もうひとつは、六本木に「ウーカレー」というインド料理店を開店したこと。店名は「うー、辛え」が語源。内装はミニクラブの居抜きで、インド人シェフによる本格的インドカレーの店だった。彼女自ら動き回り、お客さんの席へ着いて会話もした。
経営は苦しかったが、望外の出来事もあった。どこで聞きつけたのか、林葉さんと同年代のプロ棋士や後輩の女流棋士が店に通い始めてくれたのだ。林葉さんは社交的な性格だが、自分から連絡をして人を誘うことはしない。ましてや味の良くない別れ方になってしまった将棋界に対してはなおのこと。それだけ、彼女の人柄を慕って訪ねてきた棋士や女流棋士が多いということになる。
そして、懐かしい顔を見ているうちに、林葉さんの心の中に将棋を指すのを再開しようという気持ちが芽生えてきた。それまでは、将棋の盤駒や新聞の将棋欄などは見ないようにしていた。見ると、将棋をやりたくなったり寂しくなったりするからだ。
店には将棋盤と駒が置かれ、将棋が指せるようになった。
結果として、赤字が続いたので「ウーカレー」は翌年の11月に閉店することになるが、林葉さんにとっては、昔の仲間に会えたこと、将棋を再開したことなど、大きな心のプラスになった。
将棋に対する思いも復活してきた。2006年には将棋ペンクラブ会報で、作家の高田宏氏との対談に林葉さんはゲストとして登場している。
しかし、この年、様々な事情から林葉さんは自己破産をすることになる。
そして2007年から再出発。「しおんの王」がでテレビアニメとして放送され、DVD化、ゲームソフト化もされた。
ところが、「しおんの王」の原稿を書き終えた2008年、林葉さんは体調を崩して、入院を半年ほどしていた。退院後は福岡へ戻り、静養したり、将棋好きな寺の住職と将棋を指したりの日々が続いた。
林葉さんの復活
現在、お母さんと一緒に住んでいる林葉さんだが、今年は将棋への関わりが増えつつある。
2月には、日本将棋連盟の顧問弁護士であり将棋ペンクラブ会長の木村晋介氏との飛車落お好み対局が行われ、その模様が将棋ペンクラブ会報に掲載された。
また5月には、千駄ヶ谷の将棋会館で開催された将棋ペンクラブ交流会に、斎田晴子女流四段、安食総子女流初段、松尾香織女流初段とともに林葉さんはゲストとして参加している。
当初は、退会記者会見以来15年ぶりとなる将棋会館へ行くことを少しためらっていた林葉さんだったが、いったん中へ入ってしまい、将棋を指したり、昔タイトル戦で戦った斎田女流四段などと会話をしたりしているうちに、「千駄ヶ谷近辺には行きたくない」という長年の思いも氷解したということだ。林葉さんも骨の髄まで将棋が好きなのである。
この日、林葉さんは、日レスインビテーションカップに向けて、連盟の販売部で一冊の技術書を購入した。現役時代は、棋譜や定跡をまったく研究しなかった林葉さんだが、15年のブランクを少しでも埋めるために手に入れた本は何だったのか?
書名は、明日の観戦記でお伝えしたい。
7/31(土)第4回小学生・第2回中学生女子将棋名人戦 各代表者出揃う
中学生・小学生女子ナンバー1を決める「中学生女子将棋名人戦」「小学生女子将棋名人戦」を今年も開催致します。
すでに4/4(日)に四国大会(小学生のみ実施)を終了しておりますが、今年は新たに中国・上海からも代表選手が招待される予定です。
各地区大会の開催日程・会場は以下の通りです。
今年も代表を目指す「名人戦クラス」のほかに初心者・入門者も参加できる「親睦クラス」を併設します。
・主催 日本女子プロ将棋協会(LPSA)
・協賛 株式会社毎日コミュニケーションズ 厳選食品・安心堂 チュッパチャプス
・協力 共同通信社 東京おもちゃ美術館
◆名古屋大会 終了しました。
小学生名人戦代表:今井絢さん(愛知・3年)
中学生名人戦代表:中澤沙耶さん(愛知・2年)
◆大阪大会 終了しました。
小学生名人戦代表:石本さくらさん(大阪・6年)
中学生名人戦代表:長谷川優貴さん(兵庫・3年)
◆東京大会 終了しました。
小学生名人戦代表:永井さくらさん(埼玉・6年)
中学生名人戦代表:小澤あざ美さん(神奈川・2年)
◆四国大会 終了しました。
小学生名人戦代表:牟田口環美さん(愛媛・6年)
◆名人位決定戦
小学生は東京・名古屋・大阪・高松・上海各大会の名人戦クラスの優勝者5名、中学生は東京・名古屋・大阪・上海各大会の優勝者4名によるトーナメント戦で「名人位決定戦」を行います。日程は8月22日(日)、場所は「共同通信社研修・交流センター」(東京都中央区)です。代表選手の交通費と宿泊補助費は主催者負担となります。
◆大会要項
【名人戦クラス】
・予選は2勝2敗失格方式、本戦はトーナメント方式で行います。
・対局時計を使用。持ち時間は各15分、使い切ったら30秒の秒読み。
【親睦クラス】
・5対局制で成績優秀者に賞品
・午後からは「なんでもしょうぎチャレンジ」として「詰将棋」「リレー将棋」「多面指し」「ビンゴゲーム」など
のお楽しみプログラムがございます
◆どうぶつしょうぎイベント
・各大会とも「どうぶつしょうぎ」のレクチャーや対戦体験コーナー、ペアゲームなど「どうぶつしょうぎ」を楽しむブースを設置します。将棋を知らなくっても誰でもすぐに遊べます。お友達・ご家族と気軽にご参加下さい。各会場とも11:00からと13:30から60~90分開設致します。
◆申込方法
・参加者の氏名(フリガナ)・住所・電話番号・生年月日・学校名・学年・参加地区(東京・大阪・名古屋)・参加クラス・段級位を明記して、往復ハガキかFAX、Eメールにてお申し込み下さい。
〒114-0015 東京都北区中里2-6-9-102 「小・中学生女子名人戦」係
TEL:03-3915-0931/FAX:03-6413-0934
E-mail:event@joshi-shogi.com
(いただきました個人情報は当大会の運営・管理以外には使用致しません)
第4回小学生・第2回中学生女子名人戦、名古屋大会
第4回小学生・第2回中学生女子名人戦
中学生・小学生女子ナンバー1を決める「中学生女子将棋名人戦」「小学生女子将棋名人戦」を今年も開催致します。
すでに4/4(日)に四国大会(小学生のみ実施)を終了しておりますが、今年は新たに中国・上海からも代表選手が招待される予定です。
各地区大会の開催日程・会場は以下の通りです。
今年も代表を目指す「名人戦クラス」のほかに初心者・入門者も参加できる「親睦クラス」を併設します。
・主催 日本女子プロ将棋協会(LPSA)
・協賛 株式会社毎日コミュニケーションズ 厳選食品・安心堂 チュッパチャプス
・協力 共同通信社 東京おもちゃ美術館
◆大阪大会結果(7/24)
小学生名人戦代表:石本さくらさん(大阪・6年)
中学生名人戦代表:長谷川優貴さん(兵庫・3年)
◆東京大会結果(7/4)
小学生名人戦代表:永井さくらさん(埼玉・6年)
中学生名人戦代表:小澤あざ美さん(神奈川・2年)
◆四国大会結果(4/4)
小学生名人戦代表:牟田口環美さん(愛媛・6年)
◆大阪大会 7/21(水)締切
日時 7月24日(土) 10:00~受付/10:30~開会/16:00終了予定
会場 ブリーゼタワー8階・805会議室(大阪市北区梅田2-4-9)
アクセス 地下鉄:四つ橋線西梅田駅徒歩3分/阪神梅田駅(西改札)徒歩5分
JR大阪駅(桜橋口)徒歩5分/JR東西線北新地駅徒歩5分
審判 鹿野圭生初段・島井咲緒里初段
◆名古屋大会 7/28(水)締切
日時 7月31日(土) 10:00~受付/10:30~開会/16:00終了予定
会場 ウインクあいち(愛知県産業労働センター)10階(愛知県名古屋市中村区名駅4-4-38)
アクセス JR・地下鉄・名鉄・近鉄)名古屋駅より徒歩約2分
審判 鹿野圭生初段 松尾香織初段
◆名人位決定戦
小学生は東京・名古屋・大阪・高松・上海各大会の名人戦クラスの優勝者5名、中学生は東京・名古屋・大阪・上海各大会の優勝者4名によるトーナメント戦で「名人位決定戦」を行います。日程は8月22日(日)、場所は「共同通信社研修・交流センター」(東京都中央区)です。
代表選手の交通費と宿泊補助費は主催者負担となります。
◆大会要項
【名人戦クラス】
・予選は2勝2敗失格方式、本戦はトーナメント方式で行います。
・対局時計を使用。持ち時間は各15分、使い切ったら30秒の秒読み。
【親睦クラス】
・5対局制で成績優秀者に賞品
・午後からは「なんでもしょうぎチャレンジ」として「詰将棋」「リレー将棋」「多面指し」「ビンゴゲーム」など
のお楽しみプログラムがございます
◆どうぶつしょうぎイベント
・各大会とも「どうぶつしょうぎ」のレクチャーや対戦体験コーナー、ペアゲームなど「どうぶつしょうぎ」を楽しむブースを設置します。将棋を知らなくっても誰でもすぐに遊べます。お友達・ご家族と気軽にご参加下さい。各会場とも11:00からと13:30から60~90分開設致します。
◆申込方法
・参加者の氏名(フリガナ)・住所・電話番号・生年月日・学校名・学年・参加地区(東京・大阪・名古屋)・参加クラス・段級位を明記して、往復ハガキかFAX、Eメールにてお申し込み下さい。
〒114-0015 東京都北区中里2-6-9-102 「小・中学生女子名人戦」係
TEL:03-3915-0931/FAX:03-6413-0934
E-mail:event@joshi-shogi.com
(いただきました個人情報は当大会の運営・管理以外には使用致しません)
◆参加費
・大阪、名古屋大会 参加費:1,000円
大阪・名古屋会場では友達と一緒に参加の場合は参加費が一人当たり半額に
なる「友割」サービスがあります。
8/8(日) 第4回日レスインビテーションカップ準々決勝・準決勝
LPSA公認棋戦「日レスインビテーションカップ・第4回女流棋士トーナメント」の準々決勝・準決勝を昨年同様、一斉公開対局と大盤解説会を行います。
◆主催 日本女子プロ将棋協会 日本レストランシステム株式会社
◆協賛 株式会社トーエル キリンビール株式会社 中沢乳業株式会社
◆日時 2010年8月8日(日) 10:00開場/10:30開会/17:00終了予定
◆場所 京王プラザホテル東京(東京都新宿区西新宿2-2-1)
◆スケジュール・プログラム
・10:30~ OPENING 選手紹介・コメント
・10:45~ 準々決勝 石橋幸緒四段-鈴木悠子アマ
山下カズ子五段-新藤仁奈女流アマ名人
中井広恵六段-渡部愛ツアー女子プロ
船戸陽子二段-中倉彰子初段
大盤解説:木村一基八段(日本将棋連盟)、聞き手:中倉宏美二段
・14:00~ 準決勝大盤解説
女流棋士指導対局 定員12名(申込は当日行います。希望者多数の場合は抽選)
★対局は持ち時間各40分・秒読み60秒で行います
◆入場料 一般:2,000円/ファンクラブ会員・学生・女性:1,500円
◆参加申込方法
往復ハガキ・FAX・Eメールに参加者の氏名(フリガナ)・住所・電話番号を明記して下記までお申し込み下さい。
TEL:03-3915-0931/FAX:03-6413-0934/Eメール event@joshi-shogi.com
★申込先着100名の方に限り、当日お土産付きです。
◆中継サイト・過去3回のアーカイブスはこちら
◆トーナメント表(’10.7.2現在)
中倉彰-林葉戦、対局開始
第4回小学生・第2回中学生女子名人戦、大阪大会
◆大阪大会
日時 7月24日(土) 10:00~受付/10:30~開会/
会場 ブリーゼタワー8階・805会議室(大阪市北区梅田2-4-9)
審判 鹿野圭生初段・島井咲緒里初段
【小学生大会棋譜】
古川実紀さん-石本さくらさん
審判棋士と出場選手で記念撮影
大会の様子
鹿野初段による「どうぶつしょうぎ体験コーナー」。付添いのご父兄が体験!
小学生女子名人戦の部・決勝戦、古川実紀さん(左)-石本さくらさん戦
優勝の石本さくらさん(大阪・小6)
午後からは「なんでもしょうぎチャレンジ」。最初は「詰将棋チャレンジ」。1~7手詰めの問題(15問)を15分以内に何問解けるか挑戦
続いて「ぐるぐる将棋」。鹿野初段と島井初段に手合い割りで挑戦
鹿野チーム・島井チームに分かれての「リレー将棋」。この時間になるとみんなすっかり仲良くなっています
小学生の部入賞者。(審判棋士を除いて)左から3位:芦江菜々子さん、優勝:石本さくらさん、準優勝:古河実紀さん、親睦クラス敢闘賞:麻生佳奈さん
中学生の部入賞者。左が新道理紗子さん、右が優勝の長谷川優貴さん